21世紀もほぼ4分の1が過ぎ、世界の風景がすっかりと変わり始めています。新しいデジタル情報環境を基盤とした文化や芸術の国際的な交流が拡大する一方で、冷戦後のグローバリゼーションの時代が終わりを見せ、再び分断と戦争の時代が始まったようにも見えます。このような危機の時代に、歴史を検証し、未来を提示する文化や芸術が、社会に果たせる役割はますます大きくなりつつあります。
大学院国際創造研究科(GA)が2016年に設立されてからおよそ10年が経ちました。GAの開設と同時に新設されたアートプロデュース専攻では、アートマネジメント、キュレーション、リサーチの3つの領域を交差?横断しつつ、次の時代の文化と芸術の未来を担う国際的な人材を育成しています。2018年には博士課程を設置し、さらに専門性の高い人材を育成し、次世代を担う研究者、実践者として国内外で活躍しています。
学生のおよそ半数が留学生からなり、英語と日本語を中心にさまざまな言語が飛び交う豊かな文化空間であるGAは、文化芸術やメディア、行政や中間支援組織、高等教育における教育や研究の領域に多くの人材を輩出してきました。そのネットワークは国内外に広がりつつあります。
また、グローバル化するアートや文化の実践的なプロジェクト、地域に根ざしたアート?プロジェクト、そして新しい時代に対応した理論研究や調査など実践的な研究プロジェクトも大きな成果を挙げています。
アートマネジメントは、芸術の作り手と受け手をつなぐことを目的とし、公演や作品、プロジェクトなどの企画?製作?運営、資金や支援の獲得、利害関係者との連携?調整などの役割を担う活動です。美術?音楽?映像など、さまざまな領域のアートマネジメントのあり方を、その理論や歴史を踏まえ、各種事業の企画?運営といった現場における実践を通じて、自治体や企業、財団、メディア、NPO、芸術家、そして市民との関係をどのように構築するのかを学修します。また、時代の変化への対応を探り、より創造的な社会の構築に資するような、芸術と社会の新たな関係構築をめざします。
キュレーションは、主として展覧会やパフォーミング?アーツなどにおいて、テーマを考え、コンセプトを構築し、それにもとづいたアーティスト?作品?展示空間などを選択して、その企画の哲学が伝わる演出や運営を行う活動です。また、次代に向けて成果を残すためのカタログの作成など、さまざまな言語的情報発信も活動の一環です。キュレーション領域では、芸術やキュレーションに関わる最新の批評理論や実践を学びながら、さまざまな規模で、場の文脈を踏まえた展示企画を行い、理論と実践を学修します。また、キュレーションを行うにあたって必要な知識である人文学や社会科学、さらには自然科学などの多様な分野についても幅広く学びます。
リサーチ領域では、社会学?メディア文化研究?文化理論?ジェンダー論などの人文学?社会科学的な視点から、芸術と社会の関係を分析します。特に、近年の理論的な発展を踏まえつつ、芸術と社会の関係を、文献調査および具体的なフィールドワークを通じて考察します。さらに、メディアを中心とするテクノロジーの発達によって生まれつつある新しい芸術文化領域についても研究の対象としています。
大学院国際芸術創造研究科長
毛利嘉孝
国際芸術創造研究科ウェブサイト
http://ga.geidai.ac.jp/