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藝大リレーコラム - 第三回 宝生和英 「藝大のダイバーシティ」

連続コラム:藝大リレーコラム

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第三回 宝生和英 「藝大のダイバーシティ」

私は東京藝術大学邦楽科能楽専攻に2004年に入学を致しました。
恥ずかしながら中高一貫の学校であった為、久々の入学試験であったことで入学合否の発表の際には、とても緊張をしていたように覚えております。

当時は先代宗家が職務を全うできない環境にあり、宗家代理をこなしながらの学校生活に、不安がありました。しかしながら、流儀の長老の先生に、「今しか出来ない経験、今しか出会えない交流」を求めなさい、とのお言葉を頂き、改めてこの環境を最大限に生かそうと思いました。

さて、藝大の魅力は専門的な勉強が出来るということは勿論ですが、様々な分野のスペシャリストとの交流や、異業種の意見を聞く機会に恵まれることで、知見を広げるキッカケにもなります。その拠点となったのが「キャッスル食堂」でした。昼時は人が多くゆっくりとする事は難しいのですが、午後の授業がひと段落すると、多くの学生が集まり集会をしていました。
別に待ち合わせるわけでもなく、ただ偶然話があったという感じで始まる交流会は、気軽に話が弾みつつも、お互いリスペクトをしながら深みを増していきます。

ちょっと足を運べば、お隣の「大浦食堂」へ。美術館もありますので、音楽学部とは全く違うお洒落な雰囲気。(キャッスルは「趣」が魅力です!)本当は美術学部の友人も欲しかったのですが、内気な私は、ひとりで黙々と特バタ丼を食べていました。ただ、雰囲気を見渡すといたるところで、寄り合いが。やはり音楽学部と同じように刹那的なセッションが行われているようでした。イノベーティブな思考にはこの様な一期一会の出会い、そして共有した時間が重要なのではないかと思います。もちろん深い仲間も大事ではありますが、一瞬の出会いや語らいは、自分の世界を広げてくれるということが卒業後にも大きく役に立ちました。一瞬の出会いとは、まるで浮かんでは消えるアイデアの様なもので、多ければ多いほど自分の発想の引き出しが増える様になります。(芸に関してもビジネスに関しても。)

常に多くの出会いを求めるということを東京藝術大学の大学生活を通して学ぶことが出来たことが何よりの財産でした。在学中の皆さんも、これから藝大に入る方も、自分のスキルを磨くことだけではなく、一歩踏み出して、恐れず新しい出会いに挑戦して欲しいと思います。

藝大時代の様子(前列右から3番目)

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>>過去の「藝大リレーコラム」


【プロフィール】

宝生 和英
東京藝術大学音楽学部邦楽科卒業、非常勤講師 宝生流第二十世宗家、1986年、室町時代より続く能楽の名門、宝生家に生まれる 2008年、東京藝術大学を卒業後、同年4月に宗家を継承 これまでに数々の大曲を披き、一子相伝曲「弱法師双調の舞」「安宅延年の舞」を上演。 2019年に能「道成寺」が評価され松尾芸能賞新人賞を受賞。 自己出演のみならず、企画のプロデュース制作なども行う。代表的な作品に「朗読能シアター」「アーツカウンシル東京能楽の水鏡」、「スカイツリー5周年能VJ」 日本全国を始め、イタリア、香港、アブダビでも活動。代表的な活動に「ミラノ万博」「ミラノトリエンナーレ」「バチカン勧進能」、2017年に文化庁東アジア文化交流使を拝任、香港へ赴任する。

http://www.hosho-wanokai.com/