今年度の藝祭は、新型コロナウイルスのパンデミックが巻き起こる以前からかなり雲行きの怪しいスタートを切っていました。
先代の委員の方々の並々ならぬ反対を押し切り僕が実行委員長に就いた事に始まり、パラリンピックとの兼ね合いで竹の台広場が使用できなくなり、ついには新型コロナウイルスの影響で上野校地での開催は中止になってしまいました。
4月下旬というかなり早い段階での決定でしたが、昨今の状況を見るに早期の中止判断は妥当であったと言えますし、早期からバーチャル藝祭開催に向けて動けたことは大きなアドバンテージとなりました。
その頃、既に様々な催しがオンライン開催にシフトしていく中、その決定が安易に下されすぎることも同様に問題視され始めていました。もちろん藝祭も例外ではなく、『中途半端な開催をするなら中止の方がマシだ』という意見は少なからずあるだろうと想定していました。
新たな試みに対して批判や心配の声は必ずありますし、仮に完全中止を決定したとしても 『何もやらないのか』という意見は必ずあったと思います。
そんな中でバーチャル藝祭の開催を決定した主な意図としては、勿論例年あって然るべきである藝大生の表現の場の一つが潰えぬようにすること、例年の藝祭の代替企画として遂行することであり、実行委員会の役割としてもそうあるべきです。
ただそれ以上に僕が今年度のバーチャル藝祭に期待をしているのは、『藝大はオンライン上で学園祭を行った事がある』という歴史を作る事です。
中止が決定してからバーチャル藝祭開催の承認を大学に得るまで、決して楽ではありませんでした。昨今のネットやSNSは足の踏み場もないほど火種で散らかっているし、オンライン上での開催をしても対面の機会が0なわけではないので、感染対策にもかなりシビアに気を使わなければなりません。
そのような懸念事項に対して、今年検討し動いてくれた委員の存在が、今年度の藝祭だけでなく、今後の藝祭、あわよくば藝大自体の情報発信や表現の方法の幅を広げる事の一助となると考えます。
来年度の藝祭が現地で行えるか否かもまだ見通しがつきませんし、新型コロナウイルスの有無にかかわらず、以降の藝祭においてオンラインでの配信を取り入れることも選択肢の一つになっていきます。今回使用するYouTube LiveやYouTubeプレミア公開などの魅力的な配信ツールを、藝祭以外の場面で藝大として使用していく為の一つのモデルケースとしても、今年度のバーチャル藝祭は大きな開催意義を持ちます。今後藝大での様々な催しや運営形式の議論の場において、過去にこのような催しが大学に承認され行われている、という事実があることが、大きな意味を持つと考えます。
会場は用意しますので、委員自身も含む我々学生の作品、皆様のご来場でよい催しになることを願っています。
(右端筆者 始祖鳥の羽を愛でる背中 2019年9月6日撮影)
写真(上)左から5番目(中央)が筆者 2019年9月6日撮影
【プロフィール】
木村浩太
東京藝術大学美術学部建築科2年在学中
2020年度藝祭実行委員長