文化伝統調査会?成長戦略のための人材教育部会合同上野視察として、自由民主党山谷えり子参議院議員、上野通子参議院議員、二之湯武史参議院議員、松島みどり衆議院議員による上野一帯の国立美術館及び博物館の視察が行われました。
視察の最後には、日本の文化?芸術の発展に深く関わり、長きにわたり日本を代表する数多くの人材の育成および輩出をおこなっている本学において、最近の藝大生の動向や、大学としての取り組みなどについて意見交換会が行われました。
意見交換会の冒頭、澤学長から本学への来訪についての歓迎挨拶が行われると、山谷参議院議員から、自らが会長を務める自民党の文化伝統調査会において、先月(11月28日)開催された内容(「文化立国」日本を世界に発信―2020年の先へ―というテーマで講演会を行い音楽家の椎名林檎さんや文化審議会文化政策部会委員でニッセイ基礎研究所研究理事の吉本光宏さんの参加により、盛況だったことなど)に触れ、日本文化は未来を切り開く大きな潜在力を持っていることを強く感じていることなどが伝えられました。
山谷えり子参議院議員からの挨拶
歓迎挨拶をする澤和樹学長
山谷参議院議員の挨拶に宮田文化庁長官が大きく頷き、文化芸術のもつ可能性について、表現者として、また本学学長を10年つとめた経験から、文化芸術資源は日本の未来を明るくするということが伝えられました。宮田文化庁長官は、文化芸術活動の支援は、芸術家の育成のみならず、子どもからお年寄りまで皆が芸術文化を享受できるよう役立てるべきであり、それを支える人材育成やワークショップ開催など社会との接点創出の機会を充実させていく必要があるため、ここにお集まりいただいた皆さんの協力が不可欠であると強く述べ、世代を超えての文化継承や地域振興、ひいてはそこからもたらされる観光や産業の発展へと繋げるため、皆で日本を盛り上げましょうと挨拶されました。
宮田亮平文化庁長官からの挨拶
昼食会では、穏やかな雰囲気の中、議員の方々から、本学の取り組みについての積極的な質問が寄せられると、澤学長をはじめ、本学役員等からは、昨今の時代の流れに応答した取り組みをおこなっていることが伝えられ、大学として日本の芸術文化の発展に貢献したいというメッセージを示しました。
例えば、プロジェクトによって資金調達の手法を工夫し、ニッチなプロジェクトに関してはクラウドファンディングによる外部資金を活用しながら作品制作や資料保存等を行っていること、また、大学院に国際芸術創造研究科(修士課程)を設置し、近年社会的な要請が高まっているアートマネジメント人材の育成に特化した教育に着手したことが紹介されました。
さらに、国際的な交流に関しては、ロンドン、パリ、シカゴの世界最高峰の芸術大学と連携し、国際共同カリキュラムの構築に向けて教員?学生が相互交流する授業を世界に先駆けて実践していることや、外国人観光客などで賑わい、世界でも類を見ない文化芸術拠点が集中する上野の杜(上野公園一帯)にARTを集結し日本文化を世界へ発信するイベント「数寄フェス」を9月に開催、2日間でおよそ31万人の方々が訪れたこと等の報告がありました。
昼食会の終わりには、澤学長による「タイスの瞑想曲(作曲:ジュール?マスネ)」の演奏が披露され、ヴァイオリンの音色で会場をすっかりリラックスさせると、山谷参議院議員をはじめ参加した皆さんから大きな拍手が送られました。
宮田長官(前学長)の揮毫(書)の前で澤学長がヴァイオリンを奏でた
続いてCOI拠点(産学官連携棟Arts & Science LAB.)に場所を移し、宮廻センター長の案内で本学での最近の研究事例についての紹介が行われました。
まずは5月に開催されたG7伊勢志摩サミット’Terrorism and Cultural Property’会場でオバマ米大統領をはじめ各国首脳に披露した、法隆寺金堂壁画 「阿弥陀浄土図」のクローン文化財をエントランスで紹介し、また、法隆寺の協力により可能となった、法隆寺釈迦三尊像3D復元プロジェクト像を見学していただきました。その後2階へ移動し、現在オランダ芸術科学保存協会NICASと連携し取り組んでいる、オランダ(ブラバント公国)の画家ピーター?ブリューゲル作「バベルの塔」の高精細複製制作プロジェクトを紹介しました。
“模倣から超越へ”オリジナルを超えていく技術革新が日本の強みであること、また復元の工程や当時の状況を再現するための技術的なあくなき追求は、高い技術力や取扱いの難しい文化財に対しての知識を持つ本学ならでは取り組みであることが宮廻センター長から伝えられました。本学の特色ある芸術文化が創出されるものづくりの現場に訪れ、実際に触れてみることで本学への理解をより深めていただき、視察は終了しました。
参加された皆さんは、本学に対して、引き続き文化芸術に関係する機関等と緊密に連携しながら、優れた芸術家育成や我が国の芸術文化力の発信、世界の芸術文化の発展に貢献しつづけてほしい、と口々に感想と激励を述べ、本学を後にしました。